ゆきこさんへ(1998.6.12)
きょうは12日、ゆきこさんがゲストブックに書き込みをしてくれてから、ちょうど1カ月です。
わたしはゆきこさんが読んでくれているのかくれていないのかもお構いなしに、勝手に自分の書きたいことを書いてきました。
書きながら、ゆきこさんはもう援助交際はやめているものと自分の中で決めつけていたりもしました。
でも、実際はどうなのでしょう。
ゆきこさんに届く言葉はあったのでしょうか。
ゆきこさんがゲストブックに書き込みをしてくれて、わたしはゆきこさんという実在の女の子、それも援助交際をやめるつもりはないと言い放ち、夜涙が出てくることがあるけどとも言う一人の女の子と知り合いになりました。
実際には会ったことも話したこともないわけだけれど、わたしは一ヶ月ゆきこさんのことばかり考えていました。
何をどう言ったらいいのかと思って、最初はお金のことから書き始めた。
タナトスからエロスを立ち上げて、悲しみを、ほんとうの恋をなんとか説明しようと試みたのでした。
毎日手紙を書きながら、少しでもまともなことが言いたいという焦(あせ)りやら願いやら、本を何冊も買い込みました。
買った本を全部読み終えていないし、本屋に注文してまだ届いていないものもあります。
全部読み終えたら、もっとましなことが言えるかもしれませんが、今はこれが私の身の丈です。
まだもう少しゆきこさんに聞いて欲しいことがあるので、あと何通か手紙を書きます。よかったら読んで下さい。
お昼休みに友人と結婚と売春について話していて、あるお笑い系のタレントさんが夫と一回セックスする毎に一万円と決めて貯金しているとテレビで言っていたと教えてもらいました。
一瞬わたしはのけぞりましたが、考えたら夫婦が仲良くセックスするのはとてもいいことですし、貯金をするというのも悪いことではない。
それにその場で一万円貯金する決心をするには、それなりの理由がいるのかもしれません。
結婚のこのようなありようは、売買春が昇華したものと言えなくもないように思えます。
この二人がお年寄りになって、若い頃の思い出としてああそんなこともあったねぇと笑っていられるのであれば、彼らはほんとうの結婚への道のりを歩んでいると言っていいのだと思います。誹謗中傷する必要はかけらもありません。
ただ、これはやはり「ほんとうの恋」とはだいぶ違う。
結婚と売春とほんとうの恋。
わたしがどう考えているか、わかって貰えたでしょうか?
わたしが世の中のほとんどの人間はほんとうの恋などせずに死ぬのだと言うとき、人は何か悪口を言われてるような気になるかもしれません。
けれど、どこの誰が50歳でなにもかも捨てて家出する決心をしたいと思うでしょうか。
どんなもの好きが、命がけの恋文をくれた男性が18歳で自殺することを望むでしょう。
50歳で家出するという決心をさせたもの、家族に捨ててしまいなさいと言われた恋人の手紙を捨てるに捨てられなかったもの、理性も都合もすべて飛び越えて、時のふるいにかけてなおそこに残る恋、どうにも説明のしようのないその感情を、先人は「ほんとうの恋」と呼んだのだと思います。
今日の朝日新聞の夕刊に厚生白書の記事が載っていて、「三高に代わって、3C(COMFORTABLE・十分な給料、COMMUNICATIVE・理解し合える、CORPORATIVE・家事に協力的)が結婚相手の条件として浮上している」と書かれていました。
三高よりちょっとましになったと言えるのかどうか。
ゆきこさんは本当の結婚がしたいと思いますか、それともほんとうの恋という冒険の方を選びますか?
また明日も手紙を書きます。
おやすみなさい。
山口あずさ