ゆきこさんへ(1998.5.16)
ゆきこさん、読んでくれてますか?
さて、昨日の続きです。
自転車日本一周青年を質問責めにしたあくる日、早起きして彼の出発を見送りました。部屋にあるとものすごい量の荷物が、きちんを自転車の両サイドに納まってしまうことに再び驚かされました。
彼を見送ってから、友人とゆっくり朝食をとって、うまいこと言って車を持っている男の子を「利活用」している女の子に便乗して(寄生虫みたいだなと自分でも思ったのですが)、遠野まで連れていってもらいました。
男なんていちいちセックスなんかしてやらなくても、十分働く生き物なんですよ。(ってこんなこと言うと怒られるかな?)
遠野って知ってますか? 日本の昔話の故郷みたいなところです。
「遠野物語」という本を柳田国男という人が書いています。わたしは文庫本の「遠野物語」をこの旅行中持って歩いていました。
遠野でひととをり展示施設を見て歩いた後、自転車の青年に再会しました。彼はこれから博物館を訪ねたりして、その日はどこかで野宿するのだと言っていました。(やっぱり車は早いよね。でも自転車でも来れてしまうのですよね。しかも自分の部屋ごと!)
自転車青年からはその後も日本各地から葉書を貰いました。忘れた頃に葉書をくれて、天気は大丈夫かな、なんて思っていました。「雨の日は惨めに走るんです」と彼が言っていたので。
そしてなんと、翌年の1月に東京のわたしの家のすぐ近くの公園に現れました。
年賀状に1月の10日頃に東京に着くと書いてあったので、それなりに楽しみにしていたのですが、彼が電話をかけてきたのは、わたしの家から3分ほどの公園にある電話ボックスからでした。
母に大至急交渉して、その日は家に泊まって貰うことにしました。
「3分で行くから」と言って、わたしはあわててママチャリで公園に向かいました。
すると自転車青年はすっかりテントをはって、野宿の準備を終えていました。
それにしても、よくぞご無事でって、思いました。山の中を走っていると、突然鹿とかがひょこっと出てくるのだそうです。下り斜面では、自転車といえども70キロぐらいのスピードが出るので、ぶつかればこちらもそのまま、、、なんてことになりかねないのです。
テントの片づけをそれなりに手伝って(何をどうすればいいかぜんぜんわからない!)、家に彼を連れてきました。
自転車を趣味にしている会社の友人(←トライアスロンをしている!)が、ぜひ紹介してくれと言っていたので、友人の家(同じ市内に住んでいる)に電話をして、友人夫妻を家に招待しました。(夜の10時ごろ!)
それからみなでお酒を飲んで、夜中まで大騒ぎして、友人のご主人から小笠原はいいよ、なんていう話をたくさん聞いたりしました。
自転車青年は昨日八丈島から東京にフェリーで戻ってきて、竹芝桟橋のところでテントをはっていたら、どこかよその小母さんが近寄ってきて、「あんた、若いのにこんな暮らしをしてちゃいけない」と言われたそうです。ホームレスだと思われたみたいです。もっとも、当初一年の予定がだいぶ延びてしまいそうなので、予算はもっと切り詰めなくちゃならない。だから今は一日千円も使えないと言っていました。(ホームレスより貧乏だったりして。。)
これが、1997年の1月のことです。
で、つい最近、彼はまた東京に現れました。
2年を越える日本一周の旅を終えようとしていました。
今回は前回紹介した友人夫妻の家に泊めて貰うことになりました。わたしは地元でちゃんこ鍋をおご馳走して、それなりに「ねぎらい」というやつをしてあげました。
日本全国、すべての都道府県を回ったのだそうです。
彼は2年間一度もバイトをせずに過ごしたそうです。高校を卒業して就職してから残業ばかりで遣い道がなくていつの間にかたまってしまったお金(たいした金額ではないんですよ)を頼りに、きちんと2年間、節約して過ごしたのです。
東京ではホームレスに間違われ、四国ではお遍路さんの自転車バージョンだと思われたようです。もっとも四国はお遍路さんに慣れているせいか、とても居心地が良かったと言っていました。
わたしは彼の本が出るといいなぁと思っています。彼は高野聖一くんと言います。
ゆきこさんも読んでみたいでしょ?
いつかきっと高野くんの本が書店に並ぶと思いますよ。ちなみに彼の今後の目標は、歩いて世界を回る!だそうです。
あしたは何の話をしようかな。
山口あずさより