ゆきこさんへ(1998.5.15)

 ゆきこさん、昨日の続きを書きますね。

 花巻のユースホステルでは300円払うと温泉に連れていってくれるのです。

 車できている人がいたので、便乗させてもらって大沢温泉というところに行きました。

 お風呂が4つあるのですが、女風呂は1つだけなので、わたしと友人にとってはひとつしかないのと同じでした。

 そのお風呂は川に面していて、川に面した窓が全部開くようになっているのです。半露天風呂というやつで、冬は窓を閉めるみたいです。お風呂の向こうは山なのですが、誰かが望遠鏡で覗いたら見えちゃうかも知れないと思いました。混浴に入る気はしないけど、覗かれるかもと思ってお風呂に入るのを止める気にはなりませんでした。

 わたしは温泉が大好きです。

 この温泉には宮沢賢治も来たそうです。

 行きと帰りと同じ車に乗せてもらって、行きは友だち以外の人とはあまり口を利かなかったのですが、帰りにやはり車に乗せてもらっている一人の男の子(といっても当時23歳でしたが)が、自転車で日本を一周している途中だということを知りました。

 わたしは面白い人がいると質問責めにしてしまうのですが、夕飯の時に彼からいろんな話を聞きだしました。

 彼は1日1,500円の予算で旅をしていると言っていました。テントを持って、いつもは外で寝ているのだそうです。ね、驚きでしょ。それに、この1,500円というのはお小遣いではありませんよ。彼は1,500円で一日に3回食事をしたり、飲み物を買ったり、とにかく1,500円で一日生きなければならないのです。

 彼は、茨城県のひたちなか市を4月1日に出発して、今日がちょうど1ヶ月ぶりだから「贅沢」をしてユースに泊まるのだと言っていました。

 彼の自転車には大きなリュックが前輪と後輪の両側に計4つ。それからハンドルのところにタッパがくくりつけてあって、その中にはお米が入っていました。

 6月には北海道に入って夏は北海道で過ごし、それから南下して冬は沖縄で過ごすつもりだと言っていました。

 自転車だからやはり舗装道路じゃないと通れません。日本で一日自転車を走らせてコンビニが一軒もないところなんかないのだそうです。日本って便利ですよね。(もっとも北海道はないかもと言ってましたが。)彼はまるでやどかりさんみたいに、自分の部屋を自転車にくくりつけて移動しているので、余分なものは持てないのです。彼が余分なものを持っていないというより、「持てない」ということにわたしは驚かされました。

 わたしの部屋には確かによけいなものが溢れています。

 ゆきこさんは、片づけは得意ですか?

 わたしの部屋はかなりひどい状態で、3歳の甥に片づけた方がいいとアドバイスされるありさまです。余計なものが沢山あるんですよね。

 また明日続きを書きますね。

 援助交際、しないでね。

山口あずさ

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