ゆきこさんへ(1998.5.14)
ゆきこさん、どうしていますか。
きょうもお便りします。
あなたはお金が欲しいのだと言っていました。
なるほどそうかと思わないこともないのですが、きょうはわたしの友だちの話をしようと思います。
一昨年のゴールデンウィークにわたしは中学高校と同じクラスだった友人と一緒に花巻に行きました。
東北新幹線乗り放題の切符を買って、ユースに泊まりました。
一緒に旅行に行った友人は、大学院で物理学を学んで、その後中学校の先生になって、それからもう一度受験して、医学部に入りなおしました。ボランティアとか農業が好きでわたしから見るとちょっと変わっている女性です。
大人になってから会っていたら友だちになっていなかったかもしれない。
彼女はあずさが何考えているのかわからないと言い、わたしは彼女が何を考えているのか分かりませんが、大好きな友だちのうちの一人であることにかわりありません。
彼女は頑張って勉強して、あと1年でたぶん卒業して、お医者さんになる予定です。
なんで彼女の話をしたかと言うと、彼女は貧乏だからです。
自分の友だちをつかまえて貧乏だなんて失礼ですよね。
でも彼女の貧乏はちょっと素敵です。
あなたはたぶん高校生か、もしかすると中学生かもしれませんが、親がバイトを許さないと言っていますよね。
わたしの友だちはもう大人ですから、親が許すも許さないもないのですが、一旦大学をきちんと出て、尚大学に行こうと思うと、親は面倒なんか見てくれないのです。
親だっていいかげん、くたびれてしまうし、そんなにお金もなかったりするし、まぁとにかく自分のやりたいことをやろうと思うと大変なわけです。
彼女はお金がないことを我慢しています。
今、彼女は一生懸命勉強したいから、お金を作る時間がもったいないのです。
たくさん働いたらお金になりますが、たくさん働くにはたくさん時間がいるので、彼女は勉強する時間を確保するために使うお金をセーブして、じぶんの時間を大切にしています。
で、それは、彼女が一生懸命勉強したいという気持ちを我慢しないためなんです。
ね、素敵だと思いませんか?
わたしはこの貧乏な友だちをとても自慢に思っています。
この手紙は連載です。
あしたはまた別の友だちの話をします。
その友だちは花巻のユースホステルで会った友だちで、自転車で日本を一周している途中だったんですよ。
乞うご期待!
山口あずさ