ゆきこさんへ(1998.5.13)
ゆきこさん、あなたはちゃんとこの手紙を読んでくれているでしょうか。きっとアクセスしてくれてますよね。ゲストブックに書いたのよりも、もっと長い手紙を書きたくなったので、新たなコーナーを設けてしまいました。
お返事の必要は別にありません。気が向いたらまたゲストブックに何か書き込んでください。それから、わたしは決してあなたにお小言をいいたいのではないので、安心して読んでください。
昨日あなたの書き込みを見て、すぐにゲストブックにあなたに宛てた書き込みをして、林洋子さんにおろおろしてますとメールを書いて、それからまたあなた宛の文章をゲストブックに載せました。ジオシティは11時過ぎは繋がり難くなってしまうので、ちょっと不便です。
ベッドに横になってからもあなたのことが気になって、あなたが泣いているのではないかしらと気になって、眠れませんでした。
ベッドの頭のところに、読まなければと思っている本が沢山あって、その中の一冊「日本人の心のゆくえ」(河合隼雄 岩波書店 \1,400)の「援助交際」というムーブメント、という項を開いて読んでみました。
思春期は実に大変であると書かれていました。
−−思春期というのは何でもいいから途方もないこと、普通とはレベルの異なることをやらかさないとどうにもならないのだ。この子たちに道徳を説いたり、危険性を指摘したりしても無駄である。そもそも反道徳的で危険なことをやってこそ、思春期らしいのだ。−−
ゆきこさん、今思春期まっただなかですよね。大人はもの忘れが激しくてじぶんがどんな少年でどんな少女だったか、すぐに忘れてしまいます。
だから専門家が書いた本を読んで、ああそうか、と思い出したりします。
わたしも同じです。
わたしは本を読むときに、いつも気に入ったところに線を引くようにしています。表現が素敵だなと思ったり、うん、うまいこと言ってるな、と思ったり、あと気にいらないところには×をつけたり、?を付けたりもします。文庫本でも、ちょっと高かった本でも、同じように線を引きます。いい本は線だらけになってしまって、最初から最後まで線が引いてあるようなのもあります。おかしいでしょ。
昨日の夜読んだ河合隼雄先生の本でわたしが線を引いたところ。
−−「援助」名目でたましいの殺人をしている人もいる。−−
わたしはというより、世の中のこころある大人たちはみんな援助交際を悪いことだと思っています。
援助交際には二通りの悪者がいます。
一方はオヤジ。わたしは買春夫のなかでもとりわけ援助交際夫(←新しい言葉を発明しました!)を許し難く思っています。
性的弱者たる男性というのは、確かに考えてみれば哀れでないこともありません。
従軍慰安婦が問題になっていますが、実際に従軍慰安婦を活用した男たち(兵士)に対する糾弾ってあまり見受けられないでしょ? なぜだと思いますか?
慰安された兵士そのものも同様に哀れな存在だったのではないでしょうか?
もちろんだからと言って、従軍慰安婦にされてしまった女性の過酷な運命から目を背けるわけには行きません。
話をもとに戻しましょうね。
わたしは援助交際夫に、ひとかけらの同情も感じないのです。
家族に愛されていないかもしれない。上司に評価されず、同僚にバカにされ、部下に相手にされていないかもしれない。
あるいはいつも得意先にぺこぺこ頭ばかり下げていて、奥さんには愛想づかしされているかもしれない。どんなに惨めで哀れな日常を送っていて、唯一の気晴らしが援助交際だったとしても、わたしはそんなオヤジに憎しみ以外何も感じません。
あともう一方の悪者は、少女たち。
ゆきこさんは悪いことをしています。どれくらい悪いかというと、赤の他人のわたしができることならあなたを抱きしめていてあげたいと思うくらい、夜眠れなくなるくらい、それはとても悪いことです。
きょう会社に行って、会社の方に来ているメールをさっそく見てみました。
林洋子さんも、おろおろしてます。って書いてらっしゃいました。
みんなゆきこさんのこと、心配でたまらないのです。
ゆきこさんは高校生ですか? 高校生の女の子が夜涙が勝手に出てくるような気持ちでいることは、わたしにはほんとうに耐え難い。辛いことです。
わたしは宗教を信じていませんが、お祈りをすることはあります。
わたしはゆきこさんにお祈りします。
ゆきこさんの涙に。
ゆきこさんは確信犯で、じぶんの心も体もじぶんのものだ。そんなことよりお金がいるんだと思っているのだと思います。
ゆきこさん、ゆきこさんの目から出てくる涙もゆきこさんなんですよ。
お金に振り回されてはいけない。
明日もここに手紙を書きますね。
また見に来てください。
山口あずさ